ウィークリー・メッセージ 201541

 

「年間第29主日

 

 聖マルチン病院医師・司祭 井原 彰一        

 年1216年は聖ドミニコ会が1216年に創立されてから800年になります。創立800年の記念行事が世界中で行われようとしています。ドミニコ会の正式の名称は「Ordo Praedicato-rum(説教者兄弟会)」と言いますが、「道であり、真理であり、命である」イエス・キリストの真理を述べ伝えることを使命とする修道会です。

「真理」とは何でしょうか。聖書の中に真理についていろいろな教えがちりばめられていますが、現代に生きる私たちにとっては、先ず自然科学の世界における「真理」が目に着くでしょう。誰しもが認めない訳にはいかない「真理」だからであります。自然科学の「真理」(法則)に従えば、誰がやっても同じ結果が出るからであります。ところが、自然科学の世界にあってすらその「真理」は簡単ではないのです。

 皆さんもご存知の通り、理化学研究所は2014年12月19日に小保方晴子氏の発表した「STAP細胞(新型の万能細胞)」は検証実験の結果存在が確認できないと発表したのです。
この出来事は世界中に大きな衝撃を与え、小保方氏を指導した笹井教授が自殺するという悲劇まで引き起こしてしまったのです。


ここでほとんど注目されなかったのですが、笹井教授の奥さんの態度は素晴らしいものでした。奥さんは夫が自殺した悲しみの中、理研の発表を聞いた後、この事態をどのように受け止めていますかという質問に対して、次のように答えられたのです。
「それはもう、こんな状況になりながら、最後まで頑張ってSTAP細胞を再現しようとして下さった小保方さんは、諦めずに頑張り続けて下さった。そんな彼女には、ありがとうございますと言いたいです。お疲れ様でした、とお伝えしたいです・・・今言えるのはそれだけです」
“夫の無念を晴らそうと最後まで頑張ってくれた”と、恨むどころか、感謝の気持ちを語ってくれたのです。

 聖書の中に、「真理を行う者は光の方に来る」「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」「愛に根ざして真理を語り、あらゆる面で頭であるキリストに向かって成長して行きます」とあります。教授の奥さんの夫の死を受け取る態度の中に、聖霊の深い深い働きを感じるのです。            

井原彰一

 

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