復活徹夜祭説教
2008年3月22日
於:桜町教会
典礼においては,昔の出来事を「想起する」,思い出すということを目的としています。しかし,単に昔のことを思い巡らすのではなく,昔あったことが今あるものとして再現する,これを典礼と申します。そのために聖なる3日間の儀式,特に復活徹夜祭には劇的にあった出来事を再現しています。
今日の典礼は一年のうちで一番大切であり,よく準備される必要があります。復活徹夜祭は,四つの部分からなっています。第一が光の祭儀で,ろうそくの行列があります。それから賛美の歌が歌われます。それから,ことばの典礼ということで旧約聖書と新約聖書あわせて9つの朗読が準備されています。それから,今から行われる洗礼式です。最後には感謝の祭儀が行われるということで4つに分かれています。今日この場では,ことばの典礼の中で朗読されることばの意味について簡単な説明を加えましょう。旧約聖書から7つの朗読が選ばれています。それは,神様がどのように人を救われたかということを表している,神様の不思議なわざを思い起こさせる箇所が選ばれています。さらに新約聖書から2つの朗読がなされます。いずれも神様が不思議なわざを行ったということを読ませています。
旧約聖書の場合,7つの朗読の中から3つの朗読箇所を選ぶことができると決められています。勿論全部を朗読することは可能ですし,それができる場所では全部を朗読する方が良いかもしれません。でも小さい子供がいたり,長くなったりする場合にはそれを省略することができます。今は,私たちは4つ朗読をいたします。3つを選ぶことができるということは,3つを選ぶことで,教会が信者に黙想させたいことは十分にあると考えているからです。ただし,「出エジプト記14章」だけは省いてはいけないと決められています。すなわち,これは絶対欠かせない部分であり読んでもらわないと困ると決めています。では,そこでは何が扱われているでしょう。イスラエルの民がエジプトを脱出し,紅海を渡って,砂漠からイスラエルの土地に渡ったこの出来事を思い出させています。神様が,エジプトからイスラエルの土地まで導いたということを表している箇所です。エジプトでの奴隷の状態から解放されて,イスラエルの民は新しい約束の地に入る場面です。これが新約時代にあてはめられて,イエス様が奴隷の状態にある私たちを導き出したことを想い起こさせる材料にしているのです。それも紅海を渡って,すなわち,洗礼の水を通して,新しいいのちへと導いて下さることを表しています。そして,私たちはイエス様の十字架の血によってあがなわれて,教会が授ける洗礼によって新しいいのちに生まれ変わります。これを表しているので,この箇所を省いてはいけないのです。こうして,典礼のことばの部があって,洗礼が続きます。ばらばらにあるのではなくて,典礼の言葉があって洗礼があるのです。洗礼に導くために朗読がなされています。そのためには,洗礼の水によってキリスト様と一緒に死に,そしてキリスト様と一緒に立ちあがるのだというローマ書6章の箇所を読ませているのです。
このように考えると,復活徹夜祭の典礼の中心は,洗礼にあるということです。いまから行われる洗礼が中心なのです。ひいては,今洗礼を受ける人たちにとって今からの時はとても大事な時なのです。あるいは洗礼を受けた人にとっては,水と洗礼によって生まれ変わった自分の信仰生活をもう一度見直してくださいと伝えているのです。これが,今日の典礼のメッセージとなっています。
私たちは洗礼によって,復活されたキリスト様と出会います。自らもその復活の体験を通しながら,自分の生活に新しい息吹を与えていかないといけません。今日洗礼を受けられる皆さん,形だけの儀式だけの洗礼ではいけません。あなたの生活そのものを変えていく,新しいいのちの出発なのです。もう洗礼を受けて何年にもなっている信者の皆さん,自分が洗礼を受けたという意味をゆっくり考えて,それを味わって自分の生活の中に生かす,こういうことを考えてみる必要があるでしょう。こう考えますと,今から行われる洗礼の式というのが,どれほど大事か,それぞれひとりずつが考えてくださるようにお願いいたします。
※司教様チェック済み